インデックス投資(ここでは先進国株式・全世界株式・S&P500のような右肩上がりを想定できる投資信託とします)の場合は定率・定額・定口という取り崩し方があります。これらはどれも一長一短がありどれが最も良いというのは言えませんが共通しているのは利益には税金がかかるということです。
投資信託の場合は譲渡所得となり20%(所得税15%・住民税5%)の税金がかかることになります(復興特別所得税0.315%除く)。例えば100万の取崩しで元本52万+利益48万の場合は利益48万に対して20%の9.6万が税金となり、手取りは90.4万となります。
この9.6万はもう取り戻すことはできないのでしょうか?
インデックス投資の効率的な出口戦略とはこの税金をなるべく少なくするということが最大の焦点になります。それではどのような形で税金を少なくするのか、最後に私自身のプランを示していきたいと思います。
投資信託の取り崩しに使える所得控除の確認
通常サラリーマンとして働いている場合は収入に対して給与所得控除、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除等が適用されますよね。その他医療費が多かった場合等は確定申告で医療費控除というのを聞いたことがあるでしょう。またふるさと納税等をすると寄付金控除というものもありますね。
しかしセミリタイアして投資信託の取り崩しのみで生活になった場合は当然ですが給与所得控除は適用されません。適用されるのは基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除、寄付金控除、医療費控除になります。この記事では誰でも使える基礎控除と社会保険料控除、結婚している場合に使える配偶者控除を考慮して考えてみたいと思います。
投資信託の取り崩し(譲渡所得)には所得控除が使えないと思っている方も多そうですが国税庁の確定申告作成コーナーで入力していくと正常に反映されました。
独身の場合は基礎控除(48万)と社会保険料控除、結婚している場合は基礎控除(48万)と社会保険料控除、配偶者控除(38万)が所得控除されることになります。社会保険料控除は一定ではないのでここからは基礎控除(48万)と配偶者控除(38万)をベースに考えていきます。社会保険料控除がある分もう少し控除額は増えるということになりますね。
ここで冒頭で紹介した「100万の取崩しで元本52万+利益48万の場合は利益48万に対して20%の9.6万が税金となり、手取りは90.4万」のケースに当てはめてみると利益48万-基礎控除(48万)となり譲渡所得は0となります。
しかし多くの方は「特定口座 源泉徴収あり」の口座を開設しているでしょうから、一度納税してから確定申告で還付してもらう形になります。
(特定口座)100万の取崩しで元本52万+利益48万→税金9.6万納付(所得税15%=7.2万・住民税5%=2.4万)
(確定申告)7.2万還付(48万×所得税15%)
後日、市から2.15万還付(43万(住民税基礎控除)×5%)
税金9.6万-還付9.35万=2500円となり2500円は取り戻せないことになりますね。
流れとしてはこのような感じになります。
住民税が後日、市から還付されるということは体験者から教えてもらいました。
所得税は税務署から還付されますが、後日市から住民税が還付されます。私の実体験です
— MBA太郎 (@mba_taro_invest) March 12, 2021
ということは、 特定口座 利益48万(税金9.6万) 確定申告 還付7.2万(48万×15%) となり地方税の2.4万は取り戻せないということですかね? 利益48万-基礎控除48万=所得0なのですべて戻ってくると考えていたのですが違うのかな?
所得税は税務署から還付されますが、後日市から住民税が還付されます。私の実体験です
引用:Twitter
生活費240万を投資信託の取り崩しで効率よく捻出
ここからは我が家(夫婦二人)の生活費240万を投資信託の取り崩しで効率よく捻出する方法を考えてみたいと思います。使える控除は次の通りとなります。
夫 基礎控除(48万)、配偶者控除(38万)、社会保険料控除
妻 基礎控除(48万)、社会保険料控除
※配偶者控除はどちらか一方となります。
夫86万、妻48万までの利益に対しては確定申告をすることで税金が還付されることになります。投資信託で利益が出ている場合は元本+利益という形で取り崩すことになります。大雑把に言うと投資信託の取り崩しを夫86万、妻48万としている場合は税金はほぼ0ということになります。
夫86万+妻48万=134万を投資信託の取り崩しで確保します。生活費240万-134万=106万が足りませんがこれは現金を使用してもいいかもしれません。もしくは我が家の場合は夫婦共につみたてNISAをしていますからそちらから用意してもいいと考えています。
さてこの考察から我が家の場合は投資信託の取り崩しは134万まではほぼ無税なんですけど、現在妻はつみたてNISAしか行っておらず特定口座では投資信託を保有していないんですよね。大きな暴落があれば投資したいと考えていたのですがまったくそういう機会に恵まれず現在に至っています。
だから最悪といいますか私だけの86万を取り崩していくことになるかもしれません。本格的に取り崩すのは5年後を予定しているのでそれまでにうまく妻の投資が進めばいいなと思っています。
取り敢えず、これらの控除を使うことによって大幅に資産寿命は延びるはずですから忘れずにしておきたいです。
所得税は効率的に処理できるが国民健康保険料には注意
上記の話は所得税の話になりますが国民健康保険料はまた違った基準で判定されます。
7割軽減 | 33万円 以下の世帯 |
5割軽減 | 33万円+28.5万円×被保険者数 以下の世帯 |
2割軽減 | 33万円+52万円×被保険者数 以下の世帯 |
ちなみにこちらは鳥取市の軽減判定基準所得になります。たぶん更新されていないだけだと思うのですが基礎控除が48万になっているので33万→43万に変更になると思われます。
鳥取市国民健康保険料 試算ページ(https://www.city.tottori.lg.jp/hoken/200317shisan2020.htm)で計算してみました。資産ページも33万ベースになっているようなので夫婦二人として上記の表の計算式を用いてやってみました。
– | 所得 | 国民健康保険料 |
7割軽減 | 330,000 | 36,900 |
5割軽減 | 900,000 | 132,000 |
2割軽減 | 1,370,000 | 226,700 |
これだけ見ると7割減がもっともお得に見えますよね。
– | 所得 | 国民健康保険料 | 所得税 | 所得税還付 | 所得税還付-国民健康保険料 |
7割軽減 | 330,000 | 36,900 | 66,000 | 66,000 | 29,100 |
5割軽減 | 900,000 | 132,000 | 180,000 | 130,500 | -1,500 |
2割軽減 | 1,370,000 | 226,700 | 274,000 | 130,500 | -96,200 |
こちらは夫のみの基礎控除と配偶者控除を使って還付を加えて試算してみました。これでもやはり7割減がお得になっています。所得税還付計算(76万×15%+33万×5%)
– | 所得 | 国民健康保険料 | 所得税 | 所得税還付 | 所得税還付-国民健康保険料 |
7割軽減 | 330,000 | 36,900 | 66,000 | 66,000 | 29,100 |
5割軽減 | 900,000 | 132,000 | 180,000 | 180,000 | 48,000 |
2割軽減 | 1,370,000 | 226,700 | 274,000 | 204,000 | -22,700 |
こちらは夫の基礎控除と配偶者控除、妻の基礎控除を使って還付を加えて試算してみました。そうすると5割減が最もお得になるようです。所得税還付計算(76万×15%+33万×5%)+(38万×15%+33万×5%)
高額療養費制度のこともありますが使用頻度は高くないでしょうから、総合的にみて5割減がお得になるのかなと考えています。
しかしここではまだ終わらず住民税の問題があります。

この表を見る限り我が家は夫婦二人なので919000円以下の所得の場合は個人住民税は非課税となりそうです。
そう考えると以下のパターンの5割減を狙うのが最もお得だと考えられます。
– | 所得 | 国民健康保険料 | 所得税 | 所得税還付 | 所得税還付-国民健康保険料 |
7割軽減 | 330,000 | 36,900 | 66,000 | 66,000 | 29,100 |
5割軽減 | 900,000 | 132,000 | 180,000 | 180,000 | 48,000 |
2割軽減 | 1,370,000 | 226,700 | 274,000 | 204,000 | -22,700 |
ここまで考えていたのですがびっくりする情報を教えていただきました。
税金の情報、ありがとうございます。
— ぶたのすけ。 (@butanosukemaru) March 12, 2021
地方税ですが、証券口座で源泉徴収済みならば、「国税は還付申請・住民税では申告不要」で、健康保険料への影響を回避できます。市役所での申請が必要でしたが、来年は簡略化される様子です。
税金の情報、ありがとうございます。 地方税ですが、証券口座で源泉徴収済みならば、「国税は還付申請・住民税では申告不要」で、健康保険料への影響を回避できます。市役所での申請が必要でしたが、来年は簡略化される様子です。
引用:Twitter
>地方税ですが、証券口座で源泉徴収済みならば、「国税は還付申請・住民税では申告不要」で、健康保険料への影響を回避できます
この衝撃的な文面をみて歓喜しました。
つまり確定申告で還付のみしてもらい、国民健康保険料は7割減を維持できるということです。
※令和5年度分以後の住民税については申告不要制度は利用できなくなりました。
インデックス投資の効率的な出口戦略まとめ
所得控除(基礎控除・配偶者控除・社会保険料控除等)を使い確定申告で税金を取り戻す。
国税は還付申請・住民税では申告不要を申請する。(令和5年度分以後の住民税については申告不要制度は利用できなくなりました)
コメント
ちなみにセミリタイア界隈で評判の悪い生命保険だけど、終身保険の解約返戻金は一時所得になるので一時所得控除50万の範囲だと税金がかかりません。
なので一定額の保険を購入し、毎年利益50万の範囲内で部分解約していく戦略です。
なので実質的に投信と同じ商品である変額保険を投資として持つのは税金対策として理にかなっています。
僕もそうですが、この理由で保険を一部保有する人はいるはずです。
招き猫の右手さん
保険のこの使い方は有名かなと思ってます。
たぶんセミリタイア界隈で保険が評判が悪いのはコストが通常の投信よりも割高だからだと思うんですよね。
だから共済などのお安い保険+自分で投信運用パターンが多いんじゃないかな。
保険に昔に入っているお宝のものはいいけど、今からやるにはすごくお金持ってないとあまり旨みがない感じがしますね。
あ、そうじゃなくて変額保険なので予定利率(つまりコスト)はめっちゃ低く設計されてるのよ。
定額終身なんかの固定金利商品ならコスト設計がたしかに割高なんだけどね。
だから変額保険なら投信とほぼ同じだから利益があっての売却は例の一時所得ぶんだけ美味しいって話ね。
招き猫の右手さん
あ、そうなの。
一時所得控除の枠を使えるからいいよね。
おはようございます。
私も住民税の申告不要、今年初めてやってみました。
(損益通算した関係です)
区役所の税務課にわざわざ行かないといけないのが少しダルかったです。
オンライン化されると良いですね。
(市町村単位だと無理か)
曙橋さん
住民税の申告不要は来年から確定申告時にチェック入れればそれで完了するみたいですよね!
投資信託の売却益は、上場株式の譲渡益と同じ扱いのため、分離課税となり総合課税は選択できないのではないのではないでしょうか?
総合課税の選択できなければ、投資信託の取り崩し(譲渡益)に、所得控除は使えないように思います。
間違って理解していましたら、教えていただければ幸いです。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2220.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
よしくんさん
所得が投資信託の取り崩しのみの場合は基礎控除等が使用できるようです。
もちろ他の所得があっても基礎控除等が余った場合は株式などの分離課税の譲渡益から余った控除額を差し引けるみたいです。
実際に国税庁の確定申告作成をしてみましたが反映されました。
ただ普通は基礎控除等が余っている状態というのは稀ですから(というか働いていればほぼない)、リタイアした人の場合ということになりそうです。
勘違いしていました。
分離課税と総合課税は、課税に関しての計算方法が違うのであって、控除は別ですね。情報ありがとうございました。
よしくんさん
いえいえ、こちらこそ。
> 例えば100万の取崩しで元本52万+利益48万の場合は利益48万に対して
> 20%の9.6万が税金となり、手取りは90.4万となります。
私は、つい最近まで以下のような勘違いをしていました(^^;)
例えば、520万(元本)+480万(利益)から成る1,000万の投資信託で
100万を取崩した場合、利益の方から100万が引かれて、譲渡益100万の
20%(20万)が税金となり、手取りは80万円となる。
でも実際には、クロスパールさんが書かれている計算になるのですよね。
RMCRさん
そうですね。
投資信託は元本+利益の取り崩しになりますから利益分のみ税金がかかりますね。
私の認識が間違っていないようで安心しました。
早々のご返信、また、いつも具体的なシミュレーションの記事を
ありがとうございます。とても参考になります。
RMCRさん
今後ともよろしくお願いいたします。
昔から参考にさせて頂いています。コメントは初めてです。
(令和5年度分以後の住民税については申告不要制度は利用できなくなりました)とありますが、確定申告時に「申告不要制度適用・総合課税・申告分離課税」を選択することができるので、利用できるのではないでしょうか?
J.B.さん
いつもブログを見て頂きありがとうございます。
令和5年度分(2023年)は来年令和6年(2024年)に確定申告しますから申告不要制度は使えなくなります。
令和6年からにしようか迷ったんだけどこの書き方にしました。
ちょっと書き方が紛らわしかったですかね?
申し訳ないです。